聖書についての話し合い
神は人を地獄に落としますか
エホバの証人は近所に住む人たちを訪ね,聖書について話し合いたいと思っています。これまで聖書に関する何かの疑問を抱いたことがおありですか。あるいは,エホバの証人の信じている事柄や宗教的な活動について,何か疑問に思われたことがありますか。そうであれば,この次にエホバの証人と会う時に尋ねてみてはいかがですか。喜んでその点について答えてくれるでしょう。
以下は,エホバの証人が近所の人と行なう話し合いの典型的な例です。エホバの証人のトムが,ケンという男性の家を訪ねたとしましょう。
神は悪人を処罰しますか
トム: こんにちは。またお会いできてうれしいです。
ケン: あぁ,どうも。
トム: このあいだ言っておられた事柄についてお話しできれば,と思って……
ケン: えーっと,何でしたっけ。
トム: 『エホバの証人は火の燃える地獄を信じていない』と聞いて驚いた,と言っておられましたね。
ケン: そうそう,地獄を信じないなんて,どうかなぁ。
トム: 正直なご意見を,ありがとうございます。わたしは,いろいろな方の考えをぜひお聞きしたい,と思っているのですが,火の燃える地獄については,人によって考えが随分違いますよね。あなたがどう考えておられるのか,聞かせていただけませんか。
ケン: いいですよ。わたしは前々から,『極悪人は地獄に落とされて,そこで永久に責め苦に遭う』と信じているんです。
トム: そうでしたか。一般にはそう信じられていますね。ところで,あなたはこれまでに何か不幸を経験されたことがありますか。
ケン: えぇ。実は,5年前に姉が殺されたんです。
トム: えっ,本当ですか。それは痛ましいことでしたね。さぞかし寂しく思っておられるでしょう。
ケン: えぇ,姉のことを思わない日はありません。
トム: そうでしょうね。犯罪の被害者となったため,『地獄は絶対に必要だ』と思っている人たちもいます。一方的に害を被った人ならだれしも,『悪人はそれ相応の罰を受けるべきだ』と思いますからね。
ケン: 本当に,そうです。姉を殺した男には,うちの家族と同じ苦しみを味わわせてやりたいです。
トム: そう考えるのも当然だと思います。聖書の教えによれば,罪もない人が犠牲にされた時には,神も憤りを覚え,『そんなことをした邪悪な人を罰する』と約束しておられます。このイザヤ 3章11節では,「邪悪な者は災いだ!―災難だ。自分の手のした仕打ちを自分の身に受けるからだ!」と述べられています。ですから,神は必ず,邪悪な人を処罰されるのです。
ケン: でも,もしあなたの言われるように地獄がないとしたら,どうやって処罰するのですか。
テサロニケ第二 1章9節に何と書かれているでしょうか。この聖句を読んでいただけませんか。
トム: それは良い質問ですね。答えは,簡単に言えば,神は邪悪な人をとこしえの滅びによって処罰される,ということです。聖書のこのケン: いいですよ。「実にこれらの者たちは,主のみ前から,またその力の栄光から離れて永遠の滅びという司法上の処罰を受けます」。
トム: どうでしょう,神は悪人をとこしえの死によって処罰されるのですから,『邪悪な人には,何の希望もない』ということですよね。邪悪な人に将来の命の見込みは全くないのです。
ケン: 確かにそう書いてあるけど,公平だとは思えないなぁ。どんな人もみな死にますからね。悪人にはもっと重い罰を与えるべきですよ。
公正であると言えますか
トム: あなたは公正を重んじる方なんですね。
ケン: ええ。とても大切なことだと思っています。
トム: それは素晴らしいことですね。人間に善悪の観念があるのは,実は,神がそのようにお造りになったからなんです。神も公正を大いに重んじておられます。ところが,宗教指導者たちは,神が人を地獄に落とすと教えることによって,実際には神を非常に不公正な方としています。
ケン: ええっ,どういうことですか。
トム: 一つの例を考えてみましょう。アダムとエバに関する聖書の記述はよくご存じでしょう。
ケン: はい,知っていますよ。神から,ある木の実を食べてはならないと言われていたのに,従わなかった,という話ですね。
トム: そうです。ご一緒にその記述を見てみましょう。創世記 2章16,17節です。こう書かれています。「また,エホバ神は人に命令を与えてこう言われた。『園のすべての木から,あなたは満ち足りるまで食べてよい。しかし,善悪の知識の木については,あなたはそれから食べてはならない。それから食べる日にあなたは必ず死ぬからである』」。神は,禁じられた木の実を食べたらどうなると言われたでしょうか。
ケン: 「死ぬ」と言われていますね。
トム: そのとおりです。アダムの罪のゆえに全人類が罪人として生まれることになりました。 * それなのに,神は,火の燃える地獄で罰するとは一言も言われませんでした。
ケン: そうですね。
トム: 罪を犯すと永久の責め苦に遭う,ということであれば,神はアダムとエバにそう警告しておくべきだったのではありませんか。そうするのが公正で愛のあることではないでしょうか。
ケン: そう言われれば,そうですね。
トム: それに,罪を犯したアダムとエバに対して,神はこう言われました。創世記 3章19節を読んでいただけませんか。
ケン: いいですよ。「あなたは顔に汗してパンを食べ,ついには地面に帰る。あなたはそこから取られたからである。あなたは塵だから塵に帰る」。
トム: ありがとうございます。アダムは,死んだらどうなると言われたでしょうか。
ケン: 『地面の塵に帰る』と言われたんですね。
トム: まさにそのとおりです。塵に帰るということは,元は塵だったということですよね。
ケン: もちろん,そうですね。
トム: では,アダムは神によって創造される前にどこかに存在していたでしょうか。
ケン: いいえ,存在していませんでした。
トム: そうです。それに,神はこの裁きの言葉の中で,火の燃える地獄について何も述べておられません。もしアダムが本当は火の燃える地獄に行こうとしていたのであれば,神がアダムに,造られる元になった地面に帰ると告げたのは公正なことだったでしょうか。
ケン: いや,公正とは言えませんね。
悪魔が神のご意志を行なうのでしょうか
トム: 地獄の教えに関してほかにも考えてみるとよい事柄があります。
ケン: どんなことですか。
トム: 地獄を“取り仕切って”いて,そこに落とされた人々を罰するのは,一般にはだれだと言われているでしょうか。
ケン: それは,悪魔です。
トム: しかし,悪魔は神の最大の敵です。もし神が人々を,火の燃える地獄に落とし,悪魔によって責めさいなむのであれば,神と悪魔との間に協力関係があることにならないでしょうか。
ケン: うーん,そう考えたことはなかったなぁ。
トム: 例えで考えてみましょう。確か,お子さんがいらっしゃいましたね。
ケン: えぇ,息子が一人。15歳になったばかりです。
トム: 仮に,その子が非常に反抗的になって,あなたを悲しませるような悪いことをたくさん行なうとしたら,親としてどうされますか。
ケン: もちろん,矯正を施すよう努力しますよ。
トム: きっと,正しい道に立ち返るよう息子さんを助けるために繰り返し努力されることでしょうね。
ケン: ええ。
トム: では,あらゆる手を尽くしても,言うことを聞かないとしたら,やがては何らかの罰を与えざるを得ない,と思われるのではありませんか。
ケン: そうですね。
トム: しかし,悪い人が息子さんに影響を及ぼして,そうした悪いことをするように唆していた,ということを知ったとしたら,どうされますか。
ケン: 多分,その人に怒りを覚える,と思います。
トム: では,どうでしょう。邪悪で不道徳な人があなたの息子さんに影響を及ぼしてあなたに背かせたと知りながら,その人に息子を罰するよう頼んだりするでしょうか。
ケン: もちろん,そんなばかげたことはしませんよ。
トム: そうでしょうね。では,神が悪魔サタンに,つまり邪悪な人々に影響を及ぼしたその首謀者に,人々を罰するよう頼むというのは,ばかげたことではないでしょうか。
ケン: 確かに,そうですよね。
トム: それに,邪悪な人を罰することを神が望まれるとしても,神の大敵対者である悪魔が神の望みどおりに悪人を責め苦に遭わせたりするでしょうか。
ケン: いやー,そういうふうには考えてもみなかったなぁ。
エホバはすべての悪を終わらせてくださる
トム: とはいえ,神は矯正不能な邪悪な者たちに対して必ず行動を起こされます。そのことをはっきり述べている聖句を,最後に一つ見ていただけますか。詩編 37編9節です。この聖句も,読んでくださいますか。
ケン: いいですよ。「悪を行なう者たちは断ち滅ぼされるが,エホバを待ち望む者たちは,地を所有する者となる」。
トム: ありがとうございました。悪を行なう者たちはエホバ神によってどうされる,とあるでしょうか。
ケン: 「断ち滅ぼされる」と書かれていますね。
トム: そのとおりです。つまり,滅ぼされて永久にいなくなるということです。でも,「エホバを待ち望む者たち」すなわち善良な人々は,この地上で永久に生活を楽しめるのです。そう聞くと,幾つかの疑問が浮かぶかもしれませんね。例えば,神は人々が悪いことをするのをなぜ初めから阻止しないのかとか,邪悪な人々を本当に罰するつもりなら,なぜこれまでにそうしなかったのか,といった疑問です。
ケン: なるほど,興味深い点ですね。
トム: こんどお伺いした時に,聖書からの答えをお知らせしたいと思います。 *
ケン: えぇ,ぜひお願いします。
^ 詳しくは,エホバの証人の発行した「聖書は実際に何を教えていますか」という本の第11章をご覧ください。