この記き述じゅつをざっと読よむと，このような疑ぎ問もんを持もつ人ひとがいるかもしれません。でも，ここに出でてくるのは，メピボセテという同おなじ名な前まえの2人ふたりの人じん物ぶつです。この記き述じゅつを調しらべると，大たい切せつな点てんを学まなぶことができます。

イスラエルのサウル王おうには，7人にんの息子むすこと2人ふたりの娘むすめがいました。長ちょう男なんはヨナタンでした。そして，サウル王おうには，側そく室しつであるリツパとの間あいだに，メピボセテという息子むすこもいました。興きょう味み深ぶかいことに，ヨナタンにもメピボセテという息子むすこがいました。ですから，サウル王おうには，メピボセテという名な前まえの子こ供どもと孫まごがいたのです。

やがてサウル王おうは，イスラエル人じんの中なかに住すむギベオンの人ひとたちを憎にくむようになり，彼かれらを皆みな殺ごろしにしようとしました。実じっ際さい，多おおくの人ひとが殺ころされたようです。これは明あきらかに間ま違ちがったことでした。なぜでしょうか。ヨシュアの時じ代だいに，イスラエル人じんの長ちょうたちはギベオンの人ひとたちと平へい和わの契けい約やくを結むすんでいたからです。（ヨシュ 9:3-27）

この契けい約やくはサウルの時じ代だいにも有ゆう効こうでした。しかし，サウルはこの契けい約やくを破やぶり，ギベオンの人ひとたちを皆みな殺ごろしにしようとしました。それで，「サウルとその一いっ家か」は「流りゅう血けつの罪つみ」を負おうことになりました。（サム二に 21:1）やがて，ダビデが王おうになりました。生いき残のこっていたギベオンの人ひとたちは，サウルが行おこなった悪あく事じについてダビデに訴うったえました。そこでダビデは，ギベオンの人ひとたちに，どんな償つぐないをすればイスラエルのために祝しゅく福ふくを願ねがってくれるか，と尋たずねました。するとギベオンの人ひとたちは，お金かねを求もとめるのではなく，自じ分ぶんたちを「滅ほろぼし尽つくそうとした人ひと」の子し孫そん7人にんを処しょ刑けいのために引ひき渡わたすことを求もとめました。ダビデはそれを受うけ入いれました。（サム二に 21:2-6。民みん 35:30，31）

その時ときまでに，サウルとヨナタンは戦せん死ししていました。一いっ方ぽう，ヨナタンの息子むすこのメピボセテは生いきていました。とはいえメピボセテは，祖そ父ふのサウルがギベオンの人ひとたちを襲おそった時とき，その攻こう撃げきに加くわわっていませんでした。また，ダビデは友ともであるヨナタンと契けい約やくを結むすんでいました。その契けい約やくは，ヨナタンの息子むすこであるメピボセテを含ふくむヨナタンの子し孫そんにも恩おん恵けいをもたらすものでした。（サム一いち 18:1; 20:42）聖せい書しょには，「[ダビデ]王おうは，サウルの子こヨナタンの子こメピボセテに同どう情じょうを覚おぼえた。……エホバの前まえで誓ちかいを交かわしていたからである」と述のべられています。（サム二に 21:7）

では，ダビデはどのようにしてギベオンの人ひとたちの求もとめに応おうじたでしょうか。ギベオンの人ひとたちに，サウルの2人ふたりの息子むすこ（そのうちの1人ひとりがメピボセテ）と5人にんの孫まごを引ひき渡わたしたのです。（サム二に 21:8，9）こうして，その地ちに対たいする流りゅう血けつの罪つみは償つぐなわれ，災さい厄やくは終おわりました。

この記き述じゅつは単たんなる歴れき史しではありません。ここから大たい切せつな点てんを学まなべます。神かみの律りっ法ぽうには，はっきりこう書かかれています。「子こ供ども[は]父ちち親おやがすることのゆえに死し刑けいにされるべきではありません」。（申しん 24:16）サウルの2人ふたりの息子むすこと5人にんの孫まごがもし無む実じつだったなら，エホバはこの7人にんが処しょ刑けいされるのを許ゆるさなかったはずです。律りっ法ぽうには，こうも述のべられています。「人ひとはそれぞれ自じ分ぶんの罪つみのゆえに死し刑けいにされるべきです」。処しょ刑けいされたサウルの子こ供どもや孫まごたちは，ギベオンの人ひとたちを皆みな殺ごろしにしようとしたサウルのたくらみに加くわわっていたようです。それで，7人にんは自じ分ぶんの罪つみの報むくいを受うけることになりました。

ですから，何なにか間ま違ちがったことを行おこなった時ときに，自じ分ぶんは指し示じに従したがっただけだ，と言いい訳わけすることはできません。自じ分ぶんの行おこないには自じ分ぶんで責せき任にんを取とる必ひつ要ようがあります。聖せい書しょには，次つぎのような格かく言げんがあります。「あなたが歩あるいていく所ところを平たいらにせよ。あなたはしっかりした足あし取どりで進すすんでいける。右みぎにも左ひだりにも片かた寄よってはならない。悪あくから足あしを遠とおざけよ」。（格かく 4:24-27。エフェ 5:15）